耐震補強工事

耐震補強と外科手術

どちらも人の命に関わる、大切な仕事です。

私は耐震補強工事中に、発注者から「耐震補強は、外科手術と同じですね」と言われたことがあります。
なるほど、耐震診断・耐震補強は医療行為と似ています。

ターゲットは「人」と「建物」。ツールは「医学」と「建築学」。

診断の結果、「この人殺しちゃいましょう」とは言えませんが、建築はコストによっては、廃棄して新築を選択することができます。

外科手術は結果がすぐにわかるが、耐震補強は地震が来るまで、成功したのか失敗したのかわかりません。
手術台で執刀医に「調べてなくて、初めての手術なので、勉強させてもらいます。」と言われたら逃げ出したくなりませんか?

耐震補強 外科手術
ターゲット 建物 人
ツール 建築学 医学

耐震強度

耐震強度偽装事件、そして頻繁に起こる地震。最近、リフォーム工事における耐震のご相談を多く受けます。やはりご心配なのは、耐震強度です。

地震に対する強度基準では1つの目安があります。
1950年に建築基準法が施行されました。宮城県沖地震を経て、1981年には新耐震設計法が導入され、地震力に対する必要壁量の改正(増大)と軸組みの種類と壁倍率のの改正(評価の低減)が 行なわれました。これを境に木造住宅の耐震強度は大幅にアップしました。

1995年に起きた阪神・淡路大震災の教訓を経て、2000年には、引き抜き強度の検討がなされ、偏心も重要になってきました。

筋交いによる柱の押し出しで土台端部が破壊

筋交いによる柱の押し出しで土台端部が破壊
※新潟県中越地震

Z金物見当たらず・柱のホゾ抜け・筋交いの踏み外し

Z金物見当たらず柱のホゾ抜け・筋交いの踏み外し
※新潟県中越地震

そして、2004年に『木造住宅の耐震診断と補強方法』という
新耐震診断法が出ました。

阪神・淡路大震災では木造住宅で4,000人を超えるの死者がでました。

これに報いるように出された、国の研究費を使った実験の成果です。

この本をよく読むと現行の建築基準法が陳腐化しているのが判ります。
次の改正で、強度不足のレッテル(既存不適格建築物)を張られないために、新築木造住宅しかしない設計者・施工者も読むことを、お勧めします。

耐震補強工事

現在、床と天井を壊さずに耐震補強をする工法は4つあります。

  1. ML工法
  2. 大建の『壁大将』
  3. 木耐協が使っている『かべつよし』
  4. 住宅構造研究所の『GW工法
工法その1.『ML工法』

増築時、しっかりと耐震対策がとられていなかったようでした。
地震に耐えられるよう、ML工法で安定補強しました。

建築基準法の一般工法で内壁補強をすると、床と天井を壊さないと出来ません。

以前に2件、耐震補強工事一般工法でしたことがあります。
時間もかかるし、6尺の脚立の最上段で背伸びするような、大変、辛い仕事でした。

床と天井を壊さない場合、大幅なコストダウンができます。

ML工法施工事例
ML工法とは?
ML工法

ML工法は、他の工法に先駆けて、1997年に建築学会に工法を発表しています。超汎用金物であるML金物を使うのが特徴です。

中越地震の川口町で罹災証明の調査を5日間して、惨状を見ました。
早く補強する必要性を痛感して84万円のフランチャイズに入りました。
技術的な質問に技術的に答えてくれるまじめな団体です(一般社団法人耐震研究会)。
代表の保坂さんはNHKのテレビに出演したり、日経BP社から耐震関係の本を何冊も出しています。

工法その2.『GW工法(ガーディアンウォール工法)』
ーディアンウォール工法

ガーディアンウォール工法は、室内側より天井・床を壊さず補強工事ができ、解体費や修繕費を抑えた住宅用耐震補強工法です。

この工法は耐震補強の中で一番後発です。
住宅構造研究所は関東での3大建築金物メーカーの一角、株式会社カナイの試験部門が独立したものです。

その性格上、内部に試験装置があり、外部から受注業務の空き時間にすれば、試験体の製作コストだけで、データが手に入ります。
GW工法の開発に潰した試験体は300を超えるそうです。現場で補強可能な工法に即した試験体を作り、それを試験している事が強みです。和室の真壁さえ天井を壊さず柱頭金物がつきます。柱を折らない長押迂回工法があります。

GW法
長押の裏を薄鉄板で補強
更にガーディアンウォールを貼りつけ

単に固めるだけの補強ではなく、長押裏で力をつなぐことで柱の損壊を抑え、粘り強い耐力壁にします

長押(なげし)の裏に薄鉄板による補強を施しました(横揺れの力を下へ流し、柱が折れることを防ぐ働きをしています。)

揺れの圧力により、柱がすぐに折れてしまわないようにし、本震にも耐えられるような工法が特徴です。

長長押裏のプレート自体はそれ程硬いものではなく、写真のとおり座掘を起こしています。

しかし、プレートによりプレートが取り付いている上下の横桟の水平移動を拘束。長押部分での柱の損壊を防ぎ、柱にかかる曲げ負担を補なっています。

当試験写真は105角(すぎ)を使用したものですが、
90角でもその効果は検証によって確認されています。

長押補強有無の強度比較
その他の工法『ガーディアンシールド工法・ガーディアンフォース工法』
ーディアンシールド工法の施工例

窓をふさがずに壁同様の耐力が得られるのが特徴です。

  • ガーディアンシールド工法1
  • ガーディアンシールド工法2
  • ガーディアンシールド工法3
  • ガーディアンシールド工法4
  • ガーディアンシールド工法5